相続手続の流れと海外財産がある場合の留意点

相続手続は、相続人の確認、遺言書の有無、税務手続、遺産分割など、確認すべき事項が多くあります。
海外財産や海外居住の相続人がいる場合には、これに加えて、現地法上の手続や金融機関対応が必要になることがあります。

たとえば、国や地域によっては、海外財産の承継にあたり、プロベート等の手続が必要となる場合があります。
相続開始後は、日本側の期限を確認しながら、全体の流れを把握しておくことが重要です。

相続開始時

死亡届の提出

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要があります。
海外で死亡した場合には、提出期限や必要書類が異なることがあります。

遺言書の有無を確認

相続開始後は、まず遺言書の有無を確認します。
遺言書がある場合には、遺産分割の進め方や必要な手続が変わることがあります。

自筆証書遺言については、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合、法務局で確認することができます。
また、この制度により保管されている遺言書は、家庭裁判所での検認が不要です。

海外財産の有無の確認

被相続人に海外の預金口座、不動産、証券口座等がある場合には、早い段階で把握しておく必要があります。
日本の相続手続とは別に、現地法上の手続や金融機関独自の確認が必要になることがあるためです。

一部の国・地域では、相続人や遺言執行者が財産を処理する前提として、裁判所等で probate(遺産管理に関する裁判所手続)や letters of administration を取得することがあります。

相続開始から3か月以内

相続放棄・限定承認の検討

相続開始後は、被相続人の財産と債務の内容を確認し、相続放棄または限定承認を行うかを検討します。
相続放棄は、被相続人の権利義務を一切承継しない手続です。
限定承認は、相続によって得た財産の範囲内で債務を負担する手続です。

これらの手続は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で行う必要があります。

海外手続の要否の確認

海外財産がある場合には、日本の相続放棄や遺産分割の検討と並行して、現地でどのような手続が必要になるかを確認しておくことが重要です。
国や金融機関によっては、死亡証明書、遺言書、Grant of Probate、Letters of Administration、本人確認書類、認証書類、翻訳書類などが求められることがあります。

相続開始から4か月以内

準確定申告

被相続人に所得税の確定申告が必要であった場合には、相続人が準確定申告を行います。
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

個人事業を行っていた場合、不動産所得があった場合、給与を複数箇所から受けていた場合などは、準確定申告が必要になることがあります。

相続開始から10か月以内

遺産分割の整理

遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割について協議します。
不動産の名義変更や相続税申告のために、遺産分割協議書が必要になることがあります。

海外財産が含まれる場合には、日本での遺産分割協議だけで処理できるとは限らず、現地法上の相続手続や金融機関対応との調整が必要になることがあります。
そのため、国内案件のみの場合に比べて、手続全体に時間を要することがあります。

相続税申告

相続税の申告および納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
遺産分割がまだまとまっていない場合であっても、原則として期限までに申告と納税を行う必要があります。

海外財産がある場合には、財産評価や資料収集、現地手続の確認に時間を要することがありますが、日本の相続税申告期限そのものがそれに応じて自動的に延びるわけではありません。
そのため、日本側の期限を見据えて、海外手続も早めに着手しておくことが重要です。

海外口座・海外資産の解約や送金

海外口座や海外証券口座については、相続人であることが明らかであっても、すぐに解約や送金ができるとは限りません。
金融機関によっては、現地の probate の再承認(reseal)や、新たな現地手続を求める場合があります。

また、必要書類がそろっていない場合や、書類の記載内容が金融機関の要求と一致しない場合には、手続が差し戻されることがあります。
日本の口座へ送金する前段階で、現地銀行の内部手続の段階で止まることもあります。

相続開始から1年以内

遺留分侵害額請求の検討

遺言や生前贈与の内容により、一定の相続人の遺留分が侵害されている場合には、遺留分侵害額請求を検討することがあります。
現在の制度では、遺留分を侵害された相続人は、侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます。

遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき、または相続開始の時から10年を経過したときは消滅します。

主な確認事項

  • 死亡届の提出期限
  • 遺言書の有無および保管制度の利用状況
  • 相続放棄または限定承認の要否
  • 準確定申告の要否
  • 相続税申告の要否および期限
  • 海外財産の有無
  • 現地で probate 等の手続が必要か
  • 海外金融機関が求める書類や翻訳の要否
  • 遺産分割の進捗
  • 遺留分侵害額請求の要否

まとめ

相続手続は、期限のある手続と、相続人間の協議を要する手続が並行して進むことがあります。
海外財産がある場合には、これに加えて、現地法上の手続や金融機関対応が必要になることがあり、国内案件のみの場合より時間を要することがあります。

そのため、相続開始後は、日本側の期限を確認しながら、海外財産の有無や現地手続の要否も含めて、全体の流れを整理しておくことが重要です。